早春フランス・バスクへの旅2

2月22日(土) 今日はポーから東に向かってSt Bertrand de Cominnges(サン・ベルトラン・ドゥ・コマンジュ)という所へ行くことにしました。
トゥルーズからの方が近く、Pauからの列車での所要時間は2時間弱ですが、この辺りに来て重要なのは、所要時間ではなく出発時間だということを痛感しました。
朝いちの列車が7:02発、次は8:16です。帰りは13:25発の次は15:01発で、これだとポーに帰着が16:24になります。
遅い列車を逃したら帰れない可能性もあるので、ひとつづつ早めにすることにし、行きは7:02発にし、駅までの時間に余裕を見て6:20には宿を出ました。

この地域の一番いけないこと、それは町中に「犬の糞」が落ちていることです。
パリでは犬の公衆トイレが出来たと、来るときの機内誌に載っていました。ここも昼間見たら、糞を包むビニール袋がアチコチに備えてありましたが、長い習慣は一朝一夕には変わらないのでしょう、注意して歩かないと危険です。
朝まだ真っ暗な道を、犬糞に細心の注意を払いながら歩きます。車は相当なスピードで来ますから、車道も危険です。
パリと同じように早朝から大勢の人が出て掃除をしていますが、飼い主が気を付ければ随分な省人力になるでしょうに。

ケーブルカーは原則地元民のためなので、早朝はまだ動いていません。歩いても下りはたいした労力ではないですね。駅には既に沢山の若者がいました。さすが学生町です。 綺麗な車輌

始発なので列車は既に来ていました。今までフランスでは見たこともない綺麗な車輌!相変わらずイスの向きは固定でしたが、感激して写真を一杯撮ってしまいました。
折角の車内も乗客は一両に二人だけ、その後もポツンポツンと、合計で5,6人でした。

列車が走り出してしばらくすると、だんだん夜が明けてきました。真っ赤な朝焼けが雲に映って、それはキレイ。

30分ほどすると泉で有名なルルドの駅に着きます。
聖女ベルナデットがマリアさまのお告げに従って掘ると泉が湧き出て、その水が数々の奇跡を起こすことで知られていますが、列車は教会の脇を通るので、何年か前に来た時のことを懐かしく思い出しました。
科学的には理解できない数々の奇跡は今も起き続けているとのことですし、何よりも聖水が全く無料というところに真実味を感じます。
あの時、スペインから貸切列車で来たという牧師さんに会い驚いたものですが、ここはスペインとの国境に非常に近い所だったのですね、ピレネーもド迫力で迫ります。
元々はサンチャゴ・デ・コンポステラの巡礼路とは関係なかったのですが、今では通過路の一つになっているそうです。

途中の(一応)大きな駅Tarbeでもピレネーが真近に見えました。
その先のLannemezanという駅、名前も初めて聞きましたが、珍しく駅の回りに人家が沢山、大勢の人が観光バス(!)に群がっていました。何があるのでしょう。

ここから目的駅Montrejeau(モンレジュー)までの15分間、景色がまた素晴らしいものでした。
右は山が迫り、左は大きな修道院風の建物、牧場には牛が放牧されています。
Montrejeau駅には定刻8:15に着き、私を含め5人ほどが降りました。

ここから目的のSt Bertrand de Cominngesへは、線路はあるのですが、列車の運行は日曜日のみ!。
最初はこれを目指して日曜日に来ようかと思ったのですが、ポー発の一番列車では間に合わないのですね。着いた先にタクシーがあるかどうかも不安ですし。

平日はバスが走っていますが、それも7:42の次は11:20、次は14:05という調子、連絡なんて考えないのかしら。

最初からタクシーのつもりでしたが、駅前に客待ちは勿論おらず、呼ぼうにも電話番号が分かりません。ガランとした駅で掃除している人に訊いても、タクシーなど呼んだことがないと言うので、やっと掴まえた保線師のような人に頼みました。

駅の前にはタクシーではないけれど、人待ちらしい車がいくつか停まっていました。見渡すと駅から真っ直ぐに太い道が伸び、その先の崖の上には大きな建物がぎっしり並んで相当大きな町に思えました。
ここならばタクシーもあるかなと思ったのですが、来るまでに丁度30分かかりました。町に二台しかないので結構忙しいのだそうです。保線師さんに気を遣わせてしまいました。

St Bertrand de Cominngesまでは車で10分でした。
平らな大地の中を走っていくと、丘の上に写真で見たロマネスク教会が現れます。
ここはサンチャゴ・デ・コンポステラ巡礼路から少し外れるのですが、地図によってはアルルからのコース上に載せているのもあり、教会にもルート上であると書いてありました。 古代ローマの教会跡

町自体は紀元前72年、古代ローマの政治家ポンペイウスによって造られたとかで、丘の下に広がる平野には、ローマ時代の浴場、市場、劇場、寺院などの礎石が残っており、近くには古代食を食べられるレストランもあります。 古代食レストランの看板
他民族の侵入で一度は完全に破壊され、600年ほど後にベルトランという司教が、独特の霊気が感じられるこの場所に、Sainte-Marie大聖堂を建てたということです。 

タクシーで着いてみると大聖堂前の広場は無人。列車が来ない日は完全休みかと一瞬驚きましたが、10時には人が来るだろうと言ってタクシーは帰ってしまいました。 郵便局

まずは町中の探訪とばかり、さっきタクシーで入った門Porte Cabiroleまで行って入り直しました。門から見る町は、まさに中世そのまま。  
「郵便局」と書いてある家は15世紀、そのすぐそばの木組みの家は16世紀ということでした。
大聖堂は11〜12世紀に建て始められ、完成は14世紀ということです。

後で町の外まで行って遠景を楽 しみましたが、広い平原のただ中に、高い寺院を囲んで家が山裾に並ぶ、形は違うけれどモンサンミシェルを思い出しました。
そうこうしている内に、数は少ないけれど観光客もやって来ました。
たった一軒だけれど土産物屋もオープン。係員らしい人が来て大聖堂の鍵も開けてくれました。

聖堂の入り口はロマネスク建築らしい彫刻で飾られており、建物の中も立派で特にオルガンに目を惹かれました。
聖堂内は自由に見学出来ますが、聖歌隊席周辺はカバーがしてあり、夫婦連れの観光客が隙間を覗いて口惜しがっていました。 遠景
何故なら、聖歌隊席は有料で、別の入り口から内庭経由で入るようになっていました。
入場料を払おうとしたら、係の人が「さっきから町中を歩いていただろう」と話しかけてきました。大きな犬が二匹もお供し、糞に閉口しながら歩いているところを、車から見たとのこと、この辺りでは東洋人はやはり目立つのですね。 石柱の彫刻

オルガンを含めた内装は16世紀中葉作品で、この寺院の裕福さを物語る豪華なものです。
ゴシック様式の内庭は13世紀から建築が始まったとのことですが、様々な彫刻が施された石の柱群と、窓外に迫る荒々しい山の景色が印象的でした。 内庭
大聖堂の前には観光局とおぼしき立派な建物があり、中ではここだけでなく、この地方全てに亘る様々な本が売られていました。充実した資料に、シーズン中にはどれほどの人が来るのかが思われました。

町全部の観光に要する時間は多分一時間半くらいでしょう、11時過ぎには全て見終わってしまいました。帰りの列車に間に合うようにとタクシーを頼んでおきましたが、それには早すぎる、電話番号が分からない、戻っても見るものが無い、という訳で、山の下の方へ歩いて行ってみることにしました。 聖ベルトランの像

裏口に当たるPorte Majouには聖ベルトランの像がはめ込まれていました。

坂を下っていくとオレンジ色の屋根の農家が沢山並んでいて、その軒先には鮮やかな黄色のトウモロコシが沢山積んでありました。

道に沿った広い牧場には、大きなロバが三頭、馬のように大きく、態度も大きく、私を睨んで近寄って来ます。バスク独特の種というロバでしょうか。手入れが悪いのかよく見ると背中の毛が絡まって、野生のバッファローのよう。ヒマなので暫くにらみ合いの相手をしてやりました。 ロバ

山の中腹には古代円形劇場の跡らしいもの、山から少し離れるとローマ時代の風呂や寺院の遺跡が沢山あります。
再度坂を上って町に入ると、12時過ぎたので、全てがお休みになっていました。大聖堂も鍵が閉まり、観光局も閉鎖になっていました。
St Bertrand de Cominngesについて日本ではガイドブックが一冊しか見つからなかったのですが、こちらに来て見る写真にはどれも、山の下にもう一つロマネスク様式の教会が写っています。大聖堂前の広場からは反対側に当たるため見えませんでしたが、こことセットで語られるサン・ジュストという教会が麓のちょっと離れた所にあります。 遠景
こちらも重要な教会で建物の彫刻なども有名なのですが、それを知ったのは、閉まった大聖堂前の広場でガイドブックを読んでいる時でした。
今から歩いてはとても行かれないし、タクシーを呼ぼうにも電話番号が分からない、頼めそうな場所は皆閉まってしまった、迎えは時間ぎりぎり、ということで、今回は割愛せざるを得ませんでした。

近くにあった「旅籠(はたご)」で軽く昼食の後、また大聖堂前でタクシーを待っていると、小学生らしい子供達が大勢やって来ました。とってもうるさかったのですが、課題が出ているらしく、揉み合いながらも議論をしていました。そして何を勘違いしたか、私にまで「この大聖堂は、いつ建ったの」と訊いてきました。突然のことで私もちょっと引いてしまい、「知らない」と言ってしまいましたが、ガイドブックを読んだ直後だったのですから教えてあげれば良かったですね。揉み合う子供達の間を縫ってタクシーが来たので、子供達の大歓声に送られて出発しました。

13:25発の列車でポー着は14:50。まず駅で明日の列車の時間を確認です。
ポーの駅は乗降客多数、TGVも来るし、二本の始発路線もあるのですが列車の数は少なく、日本で言う「模造紙」一枚に書いた時刻表が、毎日張り替えられます。曜日によって少しずつ時刻表が変わるのです。ホーム番号を手で書き直しているところも目撃しました。
割と大きな文字で、全列車が一枚の紙に書けてしまうのです。一日中で30本くらいでしょうか。明日は日曜ですから、普段より列車は少な目です。出発は8:13発と決まりました。 ポー市街、お城はもっと左手

ケーブルカーで昇り、プロムナードに沿って左へ歩いて、アンリ4世が生まれたというポー城へ向かいました。
お城は後のフランス王の生家としては小さいものですが、内装はなかなか立派でした。このお城は観光客に公開するよりは保存に重点を置いているとかで、内部はガイドツアー、例によってフランス語の分からない人のためには英語、スペイン語のパンフレットが置いてありましたが、フランス語の説明と英語のパンフは随分違うように思えました。

アンリ4世は生まれた時、揺りかごとして亀の甲羅の内側に置かれた、ということで、宝石で飾り立てられた甲羅に旗などが添えられたものが置いてありました。
ポーを中心とするベアルンと呼ばれるこの地域は元々母親の領土ですが、ジャンヌ・ダルブレはここからパリやロワール近辺のお城まで何往復もしているのですね。お城に飾られていた食器や化粧道具を見て、これらを全部持って移動していた昔の旅の大変さを思ったものでした。

ポー市内にはドガやルーベンスの絵を所蔵している美術館もあるのですが、朝から歩き回ってもうクタクタになったので一度ホテルへ戻って夕食まで休憩しました。

2月23日(日)
ホテルは夜と朝はスチームが入ります。日中は汗をかくほどですが、朝晩は寒いのです。
朝テレビでニュースを見ていたら、サン・セバスチャンなど、スペイン側バスクでデモなど大騒動の報道、相変わらずやっているのですね。

今日はOloro(オロロン)という町まで列車、そこからバスに乗り換えてスペイン国境を少々越える予定です。
列車は外側がボロい二両編成で、珍しく発車のベルが鳴りました。車内はまあまあでしたが、2000年のポスターが貼ったままで、日本で毎日綺麗なポスターを見慣れた目には驚きでした。イスだけ新しくても他は古いらしく、車掌室のドアも体当たりしなければ閉まらない、「テクニックよ」なんて自嘲していました。

列車の所要時間は30分程、沿線はほとんどが牧草地だけれど、人家も案外沢山あって、プールつきの家、ピレネー犬を飼っている家、かなり大きな教会など、意外に裕福な印象も。
段々にピレネー山脈が迫って来、でも見える山に雪が少ないのは、山の真下まで来てしまったので、低い山に隠れて雪山が見えなくなったせいでしょうか。

列車の終点Oloron-Ste-Marie(オロロン・サント・マリー)へは8:45着。駅前にタクシー!もいる大きな町でした。
すぐ前に待っているバスに乗換えて、スペイン方面へ向かいます。車内は10人ほどで、中にいたベルギー人が、「フランス人、スペイン人、日本人にベルギー人、国際的だな〜」と言うと、運転手が「車はドイツ製だ」と合いの手を入れる、和気藹々で出発しました。
中には祖父母に連れられた小さな子供がいて、「スペイン語が出来ないボクを、向こうのおばあちゃんはどう思うだろう」なんて悩んでいました。子供はすぐ覚えるのですけれどね。

この道はサンチャゴ・デ・コンポステラ巡礼路の二つあるピレネー越えの一つ、ソンポル峠へ向かうのですが、途中にはなかなか大きな集落がいくつもあり、昔は列車も通っていたということで、川に沿って錆びた線路や駅も残っていました。

Bedousという町には中世の街並みが残っているとのことで、観光案内所もあり、バスのお客の大半は降りてしまい、反対方向Oloronへ向かうバス停には人が一杯でした。 Etsaut
シャトーのある村、昔の要塞跡などを通過し、Etsautという集落で、残ったベルギー人と私、運転手は時間調整のためにコーヒーブレイク。フランスでは日曜日には商用車(貨物トラックなど)の運行が禁止なので、道が空いていて、早く着いたようです。

Etsautのように最初にEtが付くのはバスク独特の名前なのですね。雰囲気のあるステキな集落でした。

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